「種類が多すぎてよくわからない。」風邪をひいてしまったときに、いざ薬を買おうとおもってドラッグストアにはいったあなたは、きっとこう思ったに違いありません。
成分を読んだところで、専門家でもない限り薬の成分の知識はないので、わかるわけがありません。あなたは薬が欲しいだけで、薬の成分を語れるようになりたいわけではないはずです。いまは体調が悪いのですから…
クリニックに受診しているということは、あなたはもう「風邪薬でなんとかなる」ような状態ではなくなっているか、「できる限り早く治したい」から受診したのではないでしょうか。そんなあなたに、次回また風邪をひいたときにつかえる知識をお伝えしたいと思います。
まず知っていただきたいことが発熱、鼻水、せき等ほとんどの風邪の症状は体の防御反応ということです。代表的な症状でいえば次のようになります。
これらの症状を必要以上に抑えてしまうことは病気のなおりを遅くしてしまうことになります。
薬には大きく分けて次のようなタイプがあります。
①病気を治す薬:がんに対する抗がん剤、菌に対する抗生物質
②症状をしのぐ薬:痛みに対する痛み止め、咳に対する咳止め等
③病気の悪化を予防する薬:ワクチン、喘息に対する吸入ステロイド薬、高血圧の薬
④体に一時的な効果を及ぼす薬:麻酔薬、各種検査のための試薬
⑤その他:サプリメント等
ほとんどの風邪薬(総合感冒薬)が、症状をしのぐ薬を組み合わせたものです。風邪が治る薬というよりは、風邪をしのぐ薬といったほうがいいでしょう。組み合わせた薬が多ければ多いほど抑えられる症状が多くなってくるわけなので、「とりあえずこれ飲んでおけば」みたいな使い方はできるかもしれませんが、たとえば「頭が痛いだけ」とか「鼻水がでているだけ」といったときに、抑えたい症状以外の症状に対する、いってみればよけいな薬がはいってしまうわけです。しかも症状のほとんどは、「免疫のための反応」になるのですから、かえって免疫を弱める格好になります。もし“しのぐ薬”を使うのなら、各症状に応じた薬をまとめずに各症状ごとに使うことをお勧めします。
痛み止め(=解熱剤):
痛みをとり、熱を下げる薬です。しのぐための薬の代表格といえます。知ってほしいのは解熱剤を飲んで熱が下がるのは当たり前で、それは病気が治ったからではないということです。本来病気を治すために体が出している熱を抑えている面もあります。
鼻水を抑える薬(抗ヒスタミン薬):
鼻水を減らすお薬ですが、鼻水が粘っこくなって鼻づまりが逆にひどくなったり、蓄膿になってしまう場合があるため、安易な増量や漫然と内服をつづけることは危険です。鼻水が多くない状態で飲むと粘膜がカラカラになってしまいウイルスが体の内部にはいってくるのを加速してしまいます。
咳止め:
咳は体の防御反応でもありますが過剰になってしまった場合に安静を著しく損ねてしまい、消耗の原因にもなりますので程度によってはしっかりと症状を抑えたほうがいいと思われます。
抗ウイルス薬:
インフルエンザや新型コロナウイルスの薬がここにあたります。“病気を治す薬”になります。投与期間途中で中止した場合、再発するおそれがありますので、症状がなくなっても中止せずに続けてのみきるのが大事です。治るのは対象になるウイルスだけで、風邪全般に効くわけではありません。
漢方薬:
たくさんの種類があり病状により使い分けますが、風邪の際につかうお薬の多くは体を温める作用のあるもので病気の改善を助けます。免疫反応を増強する効果も認められており、風邪の治るまでの日数を短縮したとの報告もあります。長期間内服するイメージがあるかもしれませんが、風邪の治療で使うものは即効性があります。
抗生物質:
細菌には非常に効果がある薬剤ですが(そのため投与を希望するひともいますが)、ほとんどがウイルス感染である風邪には基本的に効果がありません。ウイルスに抗生剤を使うのは虫やっつけるのにピストルを使うようなものです。